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探偵の知識

探偵になるには|手品で授業妨害をする女マジシャン

2025年11月19日

図解 秘探偵・調査マニュアル
渡邉 直美

学校の性格上、個性的な生徒が多いのは確かだが、こちとら海千山千の現役探偵。
ちょっとやそっとのことではメゲることはない。ところが、たったひとりだけ、ものスゴくビビらせてくれた生徒がいた。身長156cm、体重100kgの女マジシャンには、さすがの私もまいってしまったのだ。
授業中に鳩が飛び出したり、ホワイドボード用のフェルトペンのフタを開けたら花が咲いたり…...。はじめは此細なイタズラで済んでいたが、あまりにもしつこいし、他の講師に聞くと、どうやら授業妨害をするのは私の授業のときだけという。
講師モードで優しくしていたのでナメられたのかも”と、威厳を正して注意してもフテくされるだけ。私に何か恨みでもあるのだろうか・・・・・・”と、入学願書を調べてみると、実は、彼女と私は過去に会ったことがあったのだ。
彼女が入学する1年少し前に、私はスポーツジムに通っていた。そこで知り合った女のコと同姓同名なのだ。さっそく、仲のよかったジムの職員に彼女のことを尋ねてみると、「男に騙されて200万円くらいがされたんだって。それでヤケ食いして体重が倍以上になっちゃってさ。あんたのことをずいぶん恨んでたみたいよ」とのこと。
彼女はその男の素行調査を私に依頼してきたが、知り合い(素人)の依頼は受けない主義なので断ったところ、結果的に騙されたという。完全な逆恨みである。しかも同じジムに通っていた水商売の女のコに簡単な調査を頼まれ、それは"水商売の場合は軽いノリだし、今後もお客さんになるかも”ということで受けてしまったのだ。そしてそれが彼女の耳に入ったというわけ。
そんなある日、彼女から呼び出しがかかった。「あんたのせいで騙されたんだよ。
どうしてくれるの!? 騙し取られた200万円弁償しなさいよ!!」と、ものスゴい形相で恨み言を繰り返す。彼女の特技はマジックだけではなく、お父さんが催眠学校の校長で彼女自身も催眠術に長けている。「今ここで催眠術をかけてあげようか!」などといわれると、何の気なしにボールペンを振る動作だけでもコワくなり、弁償することになった。
結局、私に恨みをブチまけて彼女の気が済んだらしく、弁償しよくてもよ、こいこまなつとが、女めて、知り合いの衣頭だけは決して受けまいと誓う私であった。