探偵の知識

双子の女探偵

2025年11月19日

図解 秘探偵・調査マニュアル
渡邉 直美

ある日、可愛い女の子が「すいません、広告を見たんですが、私も探偵になれるでしょうか•••••」と、わがガルエージェンシーを訪れた。常に女探偵が不足している業界だから、早速、彼女にも探偵学校へ入校してもらうことになった。
彼女の名前はA子。"・彼氏が浮気しているらしいのだが、調査してもらうお金はない。ならば、自分で探偵になって調べてしまおう”というのが探偵になろうとした動機だという。
A子さんが入校して2週間ほどたったある日、彼女の隣に座っていたMクンが私の元に相談に訪れた(学校の中でのトラブルや悩みはすべて私が相談に乗ることになっている。彼は「渡邉さん、ウマく言えないんですけど、A子さんがちょっとおかしいんです」と、妙なことを言いはじめた。しかし、私が見たかぎり変なところはまったくない。Mクンったらなにおかしなこと言うのかしら・・・・・・と、そのときは気にも留めていなかった。
しかし、それから数日後、A子さんの側に座っているHさんが私のところにやってきてこういった。「渡邉さん、A子ちゃんヘンです。昨日は友達だったはずなのに、今日は知らんぷりなんです。なんか、昨日と今日とで別人みたいなんです!!」
Mクンの件もあったので、私もよーく観察してみたのだが、毎日会っているわけではないので、残念ながらわからない。それから1週間後、ついに教官が私の元へやってきた。
「渡邉さん、A子ちゃんっておそらく双子だよ。聞いてみたほうがいいよ」彼はこう私に耳打ちした。双子!! そう聞くまで私は思っても見なかった。これなら、生徒たちの感じていた”ヘン”もすべて理解できるではないか。早速、私はA子ちゃんから提出された身上書を見たのだが、双子の存在は記入されていなかった。
翌日、私はA子ちゃんを呼んで聞いてみた。すると、彼女は悪びれもせず、「バレちゃいましたか!? 授業料がもったいないんで、2人で交互に通っていたんです」と告白した。
いくら女探偵が貴重だからとはいっても、授業料詐欺はいけない。もちろん、彼女たちにはしっかりと2人分の授業料をもらい、数カ月後、プロの探偵として無事デビューさせることができたのだった。双子の探偵というと、なにかスゴいことに利用できそう••••と皆さんは思うかもしれない。彼女たちもそう主張しているが、実は正反対。ふたりで交互に尾行してもらっても、対象者には同じ人が尾行しているようにしか見えないし、同じ顔の女の子が2人で歩っていたら目立ってしょうがない。つまり、デメリットの方が多いということ。現在、彼女たちにはまったく別の捜査を担当してもらっている。これが彼女たちには大いに不満のようなのだが…・・・・・。